
「アニメ『黒執事』は僕たちが背負っていかないといけないんだなと改めて思っています」|『黒執事 -緑の魔女編-』セバスチャン・ミカエリス役 小野大輔さん&シエル・ファントムハイヴ役 坂本真綾さんが語る“もう一人のシエル”の存在について【インタビュー】
全世界シリーズ累計3,600万部を超え、その美しく緻密に描かれた世界観と多彩なキャラクターでファンを魅了し続ける、枢やな原作の漫画『黒執事』(月刊「Gファンタジー」スクウェア・エニックス刊)。
2024年4月~6月に待望となるアニメ新シリーズ『黒執事 -寄宿学校編-』が放送され、大きな話題を呼んだ本作。その続編となる『黒執事 -緑の魔女編-』が毎週土曜日各局にて放送中です。
アニメイトタイムズでは、セバスチャン・ミカエリス役 小野大輔さんと、シエル・ファントムハイヴ役 坂本真綾さんにインタビューを実施。
『寄宿学校編』、さらに現在放送中の『緑の魔女編』について、アニメ放送開始から15年以上経った今だからこそ感じることなど、たっぷりとお話を伺いました。
『寄宿学校編』と『緑の魔女編』を振り返り、15年の時を経て新シリーズに感じること
──『黒執事 -緑の魔女編-』制作決定を知った際の、率直なお気持ちをお聞かせください。
坂本真綾さん(以下、坂本):『寄宿学校編』のアフレコをしている際に、『緑の魔女編』の制作決定を知りました。久しぶりに『黒執事』が再始動してとても温まっているところで、もう1シリーズできるということで、すごく楽しみでした。
前作の『寄宿学校編』が若干変化球ぎみなストーリーだったのに対して、今作(緑の魔女編)は改めて『黒執事』らしい部分がより色濃く出るお話だと思いましたし、『寄宿学校編』とは違った雰囲気になっています。『寄宿学校編』があったからこそ、「準備万端です!」みたいな感じで臨むことができました。
小野大輔さん(以下、小野):『寄宿学校編』で久しぶりに『黒執事』でセバスチャンを演じることができて、それ自体がとても嬉しかったです。『寄宿学校編』は色々なエピソードがある中でも、一番カラフルで明るいお話だったと思います。
一方で『緑の魔女編』は暗くて重いんですよね。でも、『黒執事』の世界観の真骨頂は、やはり暗くて重いダークファンタジーだと思っています。そのシリーズを演じることができ、しかもこれまで積み重ねてきたキャリアと今のスキルをもって『緑の魔女編』に挑めるというのは、役者冥利に尽きます。本当に嬉しかったです。
──『寄宿学校編』の第1話先行上映会でも、小野さんが「万感の思いです」とお話しされていたのが印象的でした。『寄宿学校編』全体を振り返ってのご感想も教えてください。
坂本:『寄宿学校編』は、どちらかと言えばシエルが当番ぎみなお話だったと思います。
小野:「シエル青春編」って感じだったよね(笑)。
一同:(笑)
坂本:『緑の魔女編』のアフレコを終えてみて改めて思うのですが、『緑の魔女編』はセバスチャンとシエルの主従関係に大きくフィーチャーしたお話しだったけれど、『寄宿学校編』はそれぞれが自分の役割を演じて、いつもとは違う爽やかなシエルと寮監になりきったセバスチャンがいて、新キャラクターも多くて……と遊び心満載のお話という印象だったなと。最終的にはすごくダークな展開に向かうのですが、途中まではコメディ要素が多めの楽しい学園モノという感じで、「どこまでシエルのキャラクターを崩していいのかな?」ということを考えながらも、楽しんで演じていました。
──新キャラクターのP4の寮長たちのインパクトがかなり大きかったです。
坂本:特に寮対抗クリケット大会の辺りは本当に「スポ根モノかな?」みたいな(笑)。
小野:そうだね。スポーツアニメだったね(笑)。
本当に「楽しかった」という思い出ばかりですね。『黒執事』のアフレコは、結構苦しみだったり我慢を感じることが多いんです。それは決して悪い意味ではなく、モノを作る上での一つの過程で、そうやって作り上げていったものが一つの作品になるというのは、演者としてもやりがいがありました。
アフレコのスケジュールも可能な限りキャスト全員が揃うように調整してくださって、現場はとにかく明るかったです。賑やかで、悪く言えばうるさいくらい(笑)。みんなでしゃべってた。しかも、みんな『黒執事』が好きなんですよね。若いキャストさんたちが、みんな過去のアニメ『黒執事』を通ってきている。なかでもエドガー・レドモンド役の渡部(俊樹)くんは、『黒執事』が好き過ぎて、ネイルまで『黒執事』にしてくるほどで、「人生を変えてくれた作品だ」とも言っていて。長く作品に関わってきた立場として、こんなに嬉しいことはないです。
この作品があったからこそ、声優としてここまで来られたということを改めて感じる機会でもありましたし、そんな楽しさの中にも自分たちの責任を強く感じました。「ああ、自分たちは本当に良い作品に関わってきたんだな」という確認にもなって、喜びにあふれた現場でした。
──アフレコは基本的に全員揃われていたとのことですが、『寄宿学校編』との雰囲気の違いなど、今作での現場の様子はいかがでしたか?
小野:(今作は)「平和」だね。本当に『寄宿学校編』は賑やかでした(笑)。
坂本:男子校でしたよね(笑)。本当に男の子がいっぱいで。
小野:常に誰かがしゃべっていたよね。一方で、『緑の魔女編』はずっとみんなで健康の話をしていたりと、優しい時間が流れていました。
坂本:「良い病院知っているよ」とかね(笑)。
小野:そうそう(笑)。
坂本:使用人たちも15年前から基本的に同じ顔ぶれなのですが、当時はこんなにおしゃべりしていなかった気がします。15年の時を経て、みんなすごくリラックスしていて、場の空気が良い感じになってきているのを感じました。
小野:明らかにそうだよね。多分、梶(裕貴)くんなんて、最初の頃はアニメのキャリアがまだ浅い状態でフィニアン役をやっていたと思う。それは英美里ちゃん(メイリン役 加藤英美里さん)にも言えることだと思うし、東地さん(バルドロイ役 東地宏樹さん)も、当時はアニメのお仕事をたくさんやっていたわけではなかったかと思います。なので、僕が思うにみんな緊張していたんじゃないかな。
坂本:そうだよ。自分も緊張していましたし。だけど、今は笑っちゃう。当時は「新人です!」ってすごくフレッシュだった梶くんが、今の現場では、小野さんをイジってくるんです(笑)。
小野:ああ、そうだねぇ(笑)。
坂本:15年も経つとこういうふうになるんだって、本当に面白い二人でしたよ(笑)。私はずっと梶くんと小野さんの間に挟まれていたので、二人の兄弟っぽさがとても微笑ましかったですね。
小野:でも、あの頃から梶くんはあんな感じだったよ。たとえば、「『ファイナルファンタジーXIII』って小野さん言えてないですよ。『ファイナルファンタジー アーティン』って。「悪魔で執事ですくる」って言ってますよね?」って。「うるせえ!」って返すんですけど(笑)。
坂本:先輩に「言えてないですよ」っていう人、あまりいないと思う(笑)。いや、本当に面白かった。親戚の集まりのような雰囲気でした。
小野:そうだね。あんなに雰囲気って変わるものかな。お互い変わっていないんですが、いろんな現場で一緒になって、信頼感が増しているんですよね。
キャリアや年齢が離れているとか、あの当時は全然そんなことを感じていなくて。むしろ「みんな上手いな」「この人の方が売れているだろう。福山潤め!」みたいな意識はありましたけど(笑)。今は落ち着いて、この現場を俯瞰で見られるようになったし、お互いのお芝居もお互いのキャラクターも、みんな違ってみんな良いんだと思いながら、やいやいとアフレコができている。
坂本:当たり前ですけど、すごいなと思うことが多くありませんでしたか? 英美里ちゃんとか。
小野:メイリンのスナイパーとしての顔が見えたときに訛りが薄くなる、というお芝居をすっごく良い塩梅でされていたんです。
坂本:みんなプロフェッショナルかつ職人で、絶妙な細かいところをチューニングして表現しているのをたくさん見て、私、『黒執事』の現場で「上手い。声優さんって本当にすごいな」って何回思ったか分からないです。
小野:たしかに。
坂本:この年月の中でキャリアを積んで、出せる球数が増えているというか、球種が増えている感じ。
小野:てらしー(寺島拓篤さん)も、スネークの蛇たちを全部しっかり覚えているんですよ。
坂本:各々の蛇の声の違いを把握しているのは彼だけだと思うのですが、瞬時に変えてくるので(笑)。
小野:スキルが確実に上がっているし、「すごいね」「あなたもすごいですよ!」みたいな、お互いにリスペクトが増えたんだろうなぁ。でもそれは、真綾ちゃんにも感じています。随分、楽にシエルの声を出せるようになったなって。自然と男の子じゃん!
坂本:本当ですね。
小野:本当に、幸せな現場だったと思います。